M1997

中井 波花|Namika Nakai

陶芸家

中井波花

私は現在、陶芸において、ごく当たり前に使われる土と釉薬を、融点の異なる陶芸素材と再解釈しやきものの新しい表現を追求しています。手でつくる造形、火のエネルギー、素材の性格が、それぞれに能力を発揮して、折り合いのついたところが、形となり作品となります。
内側と外側の最小限の境目のように、手捻りで薄く伸ばされた土。表面に現れるシワの跡は、地層のように成型時の環境やその過程があらわれます。 成型時の環境やその過程が強調されるように、母体となる土に比べ、融点の低い釉薬が層の一つとなって、焼成で造形に変化をもたらしています。それは歪みやヒビ割れといった、陶芸では蔑ろにされてしまう荒々しい表情ですが、私にとってそれはとてもやきものらしく、力強く繊細な美しさだと考えています。
私の世代は、科学技術の進歩に伴い、多くのことをコントロールすることができる時代に生まれ育 ちました。隅々まで思考を巡らし、先回りして自分の思い通り物事を進めようとしたり、そうあることを 期待したり期待されたりします。しかし本当は、仕方のないことに諦めさせられ、救われることもあったはず。そう制作、作品を通し日々気づかされています。荒々しく、力強く、そして繊細なやきものの奔放さを包み込み受け入れる作品を作り続けて行きたいと考えています。

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